「上質なパフォーマンス、温かみのあるゴージャスなサウンド」などと言ってしまうとどことなく取っ付きづらいと感じるリスナーも少なくないだろう。だがポートランド出身のシンガー・ソングライター・Tahirah Memory（タヒラ・メモリー）が生みだすサウンドにはそういった優美な魅力と、ストレートに人々の胸を打つ素朴さ・実直さが奇跡的なバランスで同居している。ソウルフルで躍動感のあるメロディを自在に歌いあげる彼女の高いスキルの背後に見え隠れする優れた感性は、ジャズ・トランペッターの父の下で幼い頃から音楽に囲まれ過ごすうちに鍛えられたものだ。

Tahirahが感じる歓び、驚き、感動は、まるで呼吸の延長線上に歌があるとでも言いたげな彼女の自然な歌唱表現によってリスナーの元へと届けられる。オールド・ソウルへの深い愛情と同時代のR&Bに対するリスペクトを内包したTahirahの歌声は、多くのソウル・ファンが待ち焦がれていたものに違いない。

Collective Peace（コレクティヴ・ピース、以下CP）は、デトロイト出身のミュージシャンたちで結成された今注目の新星ソウル・フュージョン・バンド。後の世代にただならぬ影響を及ぼした名プロデューサー・故J Dillaの功績を称えるべく設立された「Dilla Day」の祝賀イベントでパフォーマンスを披露してほしいと、サックス奏者のLaDarrel  “Saxapeal” Johnsonが依頼を受けたことをきっかけに、たった1セットのためだけに召集され暫定的に始動したバンドだったが、気がつけばこの数年で彼らはデトロイトを中心に誰よりも熱い声援を浴びるソウル・フュージョン・バンドへと姿を変えつつある。