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中東レバノン発! プログレッシヴ・メタルバンド“タービュランス”初の国内盤リリースにともないスペシャル・インタビュー公開!
2021.03.12 INFORMATION

中東レバノン発! プログレッシヴ・メタルバンド“タービュランス”初の国内盤リリースにともないスペシャル・インタビュー公開!

地中海に面し欧州とアラブの境界に位置することで宗教的、民族的な多様性を持つレバノンの首都ベイルートにて2013年に結成されたプログレッシヴ・メタルバンド、タービュランス。プログレッシヴかつテクニカルなスタイルと琴線を震わせる叙情的なメロディが融合したサウンドで注目を集めている彼らにとって初のワールドリリースとなる最新作『フロンタル』発売に伴い、ギタリスト/コンポーザーとしてバンドの中核を担うアラン・イブラヒムがレバノンのメタルシーンや最新作のコンセプトなど語ったスペシャル・インタビュー公開!

―― 『Frontal』の日本盤リリースおめでとうございます。素晴らしい仕上がりの作品で毎日楽しませてもらっています。
A:ありがとう。それを聞けてうれしいよ!

―― 素朴な疑問なのですが、あなたの母国語はアラビア語ですよね。なぜ英語が堪能なのですか。
A:母国語はアラビア語だけど、レバノンでは11歳になるとフランス語か英語のどちらかを必修科目として選択するんだ。当時、俺はフランス系の学校に通っていたから自然な流れでフランス語を選んだ。でも、アメリカの映画や音楽が大好きだったから、英語が自然と身についたのさ。

―― 私たち日本人にとってレバノンは遠い存在の国ですが、とても興味をもっています。初歩的な質問で恐縮ですが、ベイルートで日本食を食べられたりするんですか。
A:日本食レストランがベイルートにはあるから食べられるよ。俺はベイルートから離れた所に住んでいるから食べたことないけどね(笑)。俺はMazraat Yachouhというベイルートから少し離れたところで暮らしている。他のメンバーもベイルートか、その周辺に住んでいるよ。ドラマーのSayed Gereigeだけは遠い場所に住んでいるんだ。

―― レバノンの音楽シーンについても聞かせてください。エレクトロがとても盛んだと聞きました。
A:うん、そうだね。テクノやエレクトロはとても人気があるよ。メタルシーンに関しては、かつて盛り上がりをみせていたときもあるけど、正直に言うと今は勢いがないね。DREAM THEATERもまだレバノンではプレイしたことがないんだ。ただ、小さな国であることや、色んな民族が共存しているという文化があることを考えるとメタルシーンは頑張っているよ!レバノン人には、なかなか新しい音楽を受け入れようとしない不思議な文化というか習慣があるんだよ。

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Alain Ibrahim

―― 続いてあなたについて基本的なことを聞かせてください。Alainはバンドのギタリストですが、最初にギターを弾き始めたのはいつですか。
A:ギターを弾き始めたのは15年くらい前だから、俺が12歳か13歳の頃かな。DREAM THEATERを初めて聴いた瞬間に、ギターを弾きたいという強い情熱が湧いてきたんだ。

―― 15年間、プログレッシヴ・メタル一筋というわけですね。
A:その通り!それくらい強い衝撃を受けたってことさ。DREAM THEATERに触れて以来、プログレッシヴ・メタルは俺の血と肉になっているよ。

―― 彼らの音楽を知る前はどんな音楽を聴いていたんですか。
A:GREEN DAYやLINKINPARK、AVRIL LAVIGNEといった一般的なオルタナティヴ・ロック、ポップロックを聴いていたよ。でも、ギターを弾きたい!とは思わなかったね。俺が弾きたいものはコレだ!というとてつもない衝動がDREAM THEATERにはあったんだ。まず、クラシック・ギターを手にして「Smoke on the Water」を弾き始めて、徐々に複雑な楽曲にトライして今に至るわけさ。

―― ちなみに、初めて聴いたDREAM THEATERの作品はなんだったんですか。
A:『Images and Words』(1992年)だよ。とてつもなく素晴らしいアルバムだよ。

―― 私も最高傑作だとおもいます!彼らの作品の中からベスト3を教えてください。
A:1位は『Images and Words』、続いて、『Black Clouds & Silver Linings』(2009年)と『Scenes from a Memory』(1999年)かな。好きな曲なら「Metropolis」だね。

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―― 新作『Frontal』の話題に入りましょう。クレジットをみると、ドラムパートを演奏しているのはSayed Gereigeではないようですね。
A:うん、Sayedは楽曲制作には参加しているけど、レコーディング時に背中を痛めてしまってプレイすることができなくなった。そこで、Chris Barberという人物に代わりに叩いてもらったんだ。でも、あくまでSayedがメンバーだし、ドラムパートを考えたのも彼だよ。

―― あなたは今作のプロデューサーでもあります。そのスキルはどこで身に着けたのですか。
A:いろんなことに挑戦した経験から得たものなんだ。ギターを始めてすぐにレコーディングにも興味を持ち始めたことで、自分のプレイを冷静に聴くようになったことは大きいね。それに、これまでいくつかのバンドでも活動していたしね。俺はメタル以外の音楽も貪欲に聴くようにして様々なスタイルを学び、いろんなスキルを吸収してきた。そうした経験からプロデュースできるようになったんだ。

―― 『Frontal』は、イタリアの名門フロンティアーズ・レコードからリリースとなります。彼らと知り合ったきっかけは何だったのでしょうか。
A:俺はOSTURAというバンドでもプレイしているんだけど、2018年に『The Room』というアルバムをリリースしたんだ。そのとき彼らにアプローチしたことがきっかけだね。当時は契約に至らなかったけど、幸運なことに今作はフロンティアーズ・レコードからのリリースになったんだ。

―― TURBULENCEにとって『Frontal』はセカンド・アルバムになるわけですが、ファースト・アルバム『Disequilibrium』(2015年)と比較すると、どんな変化や進化がありますか。
A:6年という歳月が流れれば作曲のスキル、制作過程や作品へのアプローチも成熟されてくる。一般的に多くのバンドのファースト・アルバムは、色々なことを表現しようと欲が出てしまうけど、セカンド~サード・アルバムと歴史を重ねると自分たちのサウンドが明確になってくる。そこが最も大きな変化だね。具体的に言うと『Frontal』は前作よりもヴォーカルが前面に出ているし、リフよりもメロディを重視したスタイルになっているよ。

―― 『Frontal』の制作はいつ始めたんですか。
A:少し複雑な流れなんだけど、①「Inside The Gage」はファースト・アルバムがリリースされる前の2014年には完成していたんだ。でも、当時は予算の都合でスムーズにレコーディングをすることが難しい状況でね。レバノンは物価がとても高くて、金銭的な負担が常にのしかかってくるんだ。その結果、レコーディングに通常の何倍もの時間がかかることが起こる。前作のレコーディングにも2年費やしているから、その間に次の作品のための楽曲が生まれることも珍しいことじゃないのさ。『Frontal』の制作は2019年の終わりには終わっていたよ。

―― ①「Inside The Gage」は、ゴージャス、パワフルで壮大さも備えていて最高のオープニング・トラックだとおもいます。あなたがリスペクトするDREAM THEATERで例えるなら「Pull Me Under」のような存在感がありますね。
A:ありがとう!それはうれしいね。みんなにも気に入ってもらえるといいな!


「Madness Unforeseen」(Music Video)

―― ②「Madness Unforeseen」はリリースに先駆けて公開されたシングルですね。
A:プロデューサーの視点から見て、アルバムを要約するようなシングルが1曲は必要だと考えている。「Madness Unforeseen」を書いているときから、シングルになる予感がしていたんだ。複雑な構造でヘヴィさもあって強い感情も伝わってくる、作品全体の空気を含んだシングルに持ってこいの楽曲だと確信しているよ。

―― この曲におけるOmar El Hageのストーリー・テラーのようなヴォーカル・スタイルは見事ですね、QUEENSRŸCHEのGeoff Tateを彷彿させます。
A:その感想はうれしいね、興奮するよ!この曲のMVでは、フィニアス・ゲージという人物に起こった実話をテーマにした作品だということを意識している。今作『Frontal』で描かれているのは、爆発事故で鉄の棒が頭を貫通する重傷を負い、脳に大きな損傷を受けたしたものの一命を取り留め、奇跡の生還を果たしたフィニアスの人生なんだ。

―― なぜ、そのテーマを選んだのですか。
A:彼の身に降りかかった悲劇は他人事ではなく、誰にでも突発的に起こり得ると感じたからだよ。そして人間はどんな悲劇も受け止めて生きていかなくてはならないってことを表現したかったんだ。


「Ignite (Single Edit)」(Lyric Video)

―― 今作は、脳の部位を表す『Occipital』(後頭骨)が前編、『Frontal』(前頭葉)が後編という二部構成になっていますね。
A:前半のタイトルの『Occipital』は記憶を司る脳の部分で、作品では事故が起こるまでのフィニアスについて描かれている。後半のタイトル『Frontal』は人格を司る部位なんだけど、爆発事故が起こった瞬間から、その後の変貌していく彼の人格を描いているんだ。

―― フィニアスの不安や怒りの感情はサウンドに見事に表れていると思います。後半の1曲目⑥「Crowbar Case」では静寂から轟音が炸裂し、後半は無機質でDjentyなリフが姿を現しますね。
A:まさにその曲で爆発事故が起こっているんだ。そして、フィニアスは大事故に巻き込まれているにも関わらず、自分の身に何が起こっているのかを冷静に理解していることも表現している。フィニアス・ゲージに関するエピソードに興味を持った人がいたら是非調べてほしいね。


「Dream Theater – In The Name Of God」(SPLIT SCREEN Cover)

―― 本編の8曲に加えて、日本盤CDのボーナストラックにはDREAM THEATERのカヴァー「In The Name Of God」が収められていますね。その経緯を教えてください。
A:実は、この曲は5年くらい前にYouTubeで公開していたんだ。今回の日本盤リリースにあたって、日本にはDREAM THEATERのファンが多いし、特別収録するのは良いアイデアだと思った。彼らは日本武道館でプレイしているよね。

―― 映像作品もリリースしています。
A:俺にとって、『Live At Budokan』(2004年)は、お気に入りの作品なんだ。John Petrucciの最高のギターソロが収められているからね!

―― あなたは、過去にDREAM THEATERのカヴァーソングを演奏するイベントもやっていたそうですね。
A:うん、以前やっていたよ。ただ、今はカヴァーをプレイすることよりも自分たちのオリジナル曲に集中するときだとおもっている。幸運なことに新作『Frontal』もリリースされるしね。

―― デジタル配信限定のボーナストラックとして収められる「Faceless Man (Live Acoustic Version)」についても教えてください。
A:このボーナストラックは、フロンティアーズ・レコードとの契約後にレコーディングしたものだ。アルバム・ヴァージョンとは、明らかに違う仕上がりだけど、それぞれ美しいメロディを際立たせることができた。他の曲のアコースティック・ヴァージョンにトライするのも良いアイデアだと思うな。

―― 今作はレーベルからの援助を得て制作されたんでしょうか。
A:いや、全て自分たちの力で完成させてから契約に至ったよ。エレキ・ギターやコンピューター処理できるものは自宅でレコーディングして、ヴォーカルやアコースティック・ギターといった空間の響きが必要なものはOne Day Studiosというスタジオを押さえて録音したんだ。

―― 『Frontal』は、楽曲のクオリティはもちろん、素晴らしいサウンド・プロダクションを誇る作品だとおもいます。ミキシングを手がけたLucas De La Rosaについて教えてください。
A:Lucasはフランス人ギタリストで、優れたエンジニアでもあるんだ。彼が手がけたイギリスのプログレッシヴ・メタルバンドIHLOの作品の音の仕上がりが素晴らしくて、直接依頼したんだ。彼の熱心な仕事ぶりには感銘を受けたよ。俺が誰かと仕事をするときに最も大切にしていることは“情熱”なんだ。情熱を仕事に注いでくれる人からは必ず何かを得られるからね。あと、作品のテーマが視覚的に表現されたアートワークを手がけてくれたレバノン人のCharles Assafも情熱的に仕事をしてくれた。彼は今作のデモ音源を聴いて、イメージを膨らませて素晴らしいものを届けてくれたよ。

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―― 昨年から続いている世界的なコロナ禍は、今作の制作にどんな影響を及ぼしましたか。
A:『Frontal』は2020年3月には全てのプロセスが完了していた。その全力を注いだ作品がリリースされるまで1年も経ってしまったことはストレスだったし残念なことだよ。でも、ロックダウンの期間は、メンバー各々が活動をしていたし、最終的に作品がリリースされるのだから良かったと思っている。

―― まだ先が見えない状況ですが、これからの予定はありますか。
A:そうだね、どんなに小さな規模でもいいから、ツアーは実現させたいよ。まだ計画できる状況じゃないかもしれないけどね。いつか日本でのライヴもできたら最高だ。そのためにも日本のメタルファンに『Frontal』を聴いてもらいたいね!

取材・文:澤田修 (REAL ROCKS)

<アルバム情報>
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アーティスト:TURBULENCE / タービュランス
タイトル:FRONTAL / フロンタル
レーベル:P-VINE
品番:PCD-25320
定価:¥2,750(税抜 ¥2,500)
発売日:2021年3月12日(金)
日本語解説:澤田修

《収録曲》
1.Inside The Gage
2.Madness Unforeseen
3.Dreamless
4.Ignite
5.A Place I Go To Hide
6.Crowbar Case
7.Faceless Man
8.Perpetuity
9.In The Name Of God (Dream Theater cover)*
*日本盤CD限定ボーナストラック

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