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スフィアン・スティーブンス、5年ぶりとなる超待望の新作『ジ・エイジ・オブ・アッズ』、遂に10月13日リリース!!
2010.09.22
RELEASE
オリジナル楽曲から成るフル・アルバムとしては、『Illinois』以来5 年ぶりとなるスフィアン・スティーヴンス超待望の新作、『The Age of Adz』が10月13日にリリースされる!
・・・あらゆる予想や期待の遥か上を行く衝撃的な傑作となった・・・!
知る人ぞ知るルイジアナ出身の黒人看板画家にしてアウトサイダー・アートの巨人、ロイヤル・ロバートソン(1930-1997)が手がけた特異な作品群を全面に配したアートワーク、初期のインストゥルメンタル・アルバム『Enjoy Your Rabbit』にも通じるエレクトロニックなサウンド、前作『The BQE』でも顕著だった緻密にアレンジされたホーンやストリングス、さらには何層にも折り重なるヴォーカルとコーラス、といった要素を大胆に融合させたユニークな音像、自らの内面の葛藤を抉り出すような歌詞。コンセプチュアルな装いを剥ぎ取った、これまでとは全く異なるスフィアンの一面に圧倒されるだろう。
SUFJAN STEVENS:『The Age of Adz』
スフィアン・スティーヴンス/『ジ・エイジ・オブ・アッズ』
2010.10.13 in stores
01. Futile Devices – 2:11
02. Too Much – 6:44
03. Age of Adz – 8:00
04. I Walked – 5:01
05. Now That I’m Older – 4:56
06. Get Real Get Right – 5:10
07. Bad Communication – 2:24
08. Vesuvius – 5:26
09. All for Myself – 2:55
10. I Want To Be Well – 6:27
11. Impossible Soul – 25:35
『The Age of Adz』は、オリジナル楽曲を収録したフル・アルバムとしては、2005 年の都市ポップの傑作『Illinois』以来となるスフィアン・スティーヴンスの新作である。このニュー・アルバムは、まずはそのコンセプト的な土台の欠如という点で、次にスフィアン自身への没入という点で、彼の最も特異な作品だと言えるだろう。このアルバムは、彼がソングライターとしてこれまで見せてきたストーリーテリングのテクニックを手放し、コンセプトに妨げられることがない、より根源的なステートメントになっている。物語を補強するための意匠やキャラクターのスケッチはほとんどないし、歴史的なパノラマも市民的なジェスチャーも文学的なトリックも、文化理論に浸かった説明的な描写も、お膳立てされた舞台や背景や対立や解決や大団円もない。スフィアンは、物語的な巧妙な手段を剥ぎ取って、よりプリミティヴなアプローチを選び取り、技巧よりも本能を重要視している。
結果として、恐らく彼がこれまでに手がけてきたどの作品よりも生き生きとして、根源的で、率直なアルバムが生まれた。ここで展開されている主題は、歴史的でもなければ好んで議論を誘う感じでもなく、むしろ個人的かつ根源的であり(たとえ少し若すぎたとしても)、愛、セックス、死、病、不安、そして自殺といったものが、このソングライターにはかつて見られなかったような、切迫感や直截さを伝えるエレクトロニックなポップ・ソングのタペストリーの中に姿を現している。
もちろん、純然たる愛(と愛情)のテーマは、しばしば恥じらいのない率直さを伴って深く浸透している。歌の内容がスリープオーヴァーにせよ、老いにせよ、病にせよ、黙示録にせよ、スフィアンはその全てを、愛と愛情、さらには、触れ合いや親密さや繋がりへの欲求のレンズを通して描かずにはいられない。恐らくこれは、コンセプチュアルな華やかさや壮大な飾りにも関わらず、私たちがずっと感付いていたことを明らかにしている。つまり、スフィアンが根本的には感覚の人だということである。しかも、病的なほどの。死が、ある時には火山の頂にある神託所として、またある時には夜の窓辺に現れる前兆として不気味に迫ってくる。煙が立ち上る火山やエイリアンの宇宙船やボバ・フェットのような格好をした悪魔的な神々を背景に配した、このようにエモーショナルでロマンティックなクライマックスを、私たちはどう解釈すればいいのだろうか?
宇宙的な主題は、故意にエレクトロニックでシンセサイザーを強調した(時にはダンサブルでさえある!)本作における明らかなサウンドの変化によって、さらに高められるばかりである。アコースティック・ギターやバンジョーはドラム・マシンやアナログ・シンセに取って代わられている。ループ、サンプルやデジタル・エフェクトが、あらゆるヴァースやコーラスやブリッジの下で喉を鳴らし、ぶつぶつ言っている。スフィアンの初期作(すなわち、エレクトロニックなアルバム『Enjoy Your Rabbit』)に通じている人にとっては、このデジタル・ポップの世界への介入もそれほど驚くにはあたらないだろう。ただ、本作で違っているのは、エレクトロニックなサウンド・コラージュが、歌のコレクションの中に取り入れられており、サウンドそのものが声に等しい立脚点を与えられ、共にエフェクターのペダルボードで加工されているという点だ。アルバムは、ブラスやストリングスや木管や多くの声が重なって織り成される聖歌隊のようなコーラスなどによって濃密なアレンジを施されてもいる。これらの「生っぽい」要素は、シンセサイザー的な音のモンタージュとの生き生きとした並列状態を生み出し、文字通り独自の「音のセオリー」を引き出している。それは、現実と非現実、あるいは通常と異常の衝突とその解消と言えるようなものである。
こうした主題は、アルバムのタイトルに最も適切に示されている。『The Age of Adz』は、ロイヤル・ロバートソン(1930 – 1997)(註:1936年を生年とする説もあり)の黙示録的なアートに言及したものである。ルイジアナ出身の黒人看板画家(そして自称予言者)だったロバートソンは、精神分裂症に苦しみ、その作品は、アーティストの鮮やかな夢と、宇宙人、未来的な自動車、エキセントリックな怪物や、最後の審判の徴(しるし)、といったビジョンを描いている。そこでは全てが、聖書の予言、数占い、北欧神話やアメコミ的な語法といったものの訳の分からない融合の中に覆い隠されている。
アルバムのいくつかの部分は、ロバートソンの作品を出発点として宇宙的な意識へと入り込み、そこでは基本的な本能が、神の怒りや環境破壊による終末や個人的な喪失といった異常な光景を描くタブローへと置き換えられている。
ロバートソンのイマジネーションの中では、銃やレーザーやガーゴイルや交戦中の戦艦たちといったものが、ハリウッドのB 級映画的なスペクタクルを伴って人類の罪深さを際立たせている(ロバートソンの作品のセレクションが、アルバムのアートワークにも並外れた色彩を加えている)。
しかし、ロバートソンは一方で世俗の暮らしを送った人物でもあった(彼の主要な画材はポスターボードやマジックマーカーやグリッターだった)。貧困に近い状態でトレイラーの中で一人暮らしをしていた彼の作品には、いくら現実離れしていても、空腹、疲労、不安、食料クーポン、孤独や親密さを求める欲望といったものへの悲壮感漂う言及があり、恥じらいもなく思い入れたっぷり
の不平不満がある。同様のやり方で、スフィアンは自らのイマジネーションによって、高所(神の啓示、愛、宇宙、黙示録)の輝きが、孤独や自己懐疑やパニックのぬかるみの中で彼の心を引き裂く一方、彼の身体は恋人や兄弟や友人とのありふれた接触を求めている、という状況を描いている。
【補足情報】
また、このアルバムとは別個に独立した作品として先日急遽配信リリースのみで発表されたEP『All Delighted People』も大好評絶賛配信中。こちらのEP収録曲は、新作アルバム『The Age of Adz』に収録される予定は無く、完全に独立した作品としての魅力を強く提示している。