リリース情報

CUT YOUR THROAT.
Struggle For Pride
CUT YOUR THROAT.
ストラグル・フォー・プライド
『カット・ユア・スロウト』
2009/10/07
CD
PECF-1002

¥1,600(税抜¥1,524)

強烈なライヴ・パフォーマンスでハードコア・シーンのみならず、クラブ・ミュージック界隈からも大きな注目を集めているバンド、Strugglefor Pride(ストラグル・フォー・プライド/以下、S.F.P.)。
S.F.P.初のfelicity音源では、HAWKWIND "SILVER MACHINE"をカヴァー。カヒミ・カリィのヴォーカルをフィーチャーしました。
他全4曲収録。

真夜中、都会のゲリラたちは危険を承知でうごきまわる。彼らは秘密の入口を知っている。それは、支配者たちや普通の人たち、あるいは今これを読んでいるほとんどの音楽業界の人たちも知らない入口だ (これを書いている僕だって、それは正確には知らない)。そしてその先にはアナーキーな地平が広がっている。さあ、そこから先の言葉は、われわれ音楽業界で文章を書いている人たちの想像力に関わっている。この際だから、みんなで考えてみましょう。彼らが探り当てている“自由"というものの意味を。

昨年リリースされた7インチ「Change The Mood / Movies Scenes」を思い出して欲しい。この音楽は私たちの報復処置であり、この汚れた音楽を政治性から隔離しようとする凡庸なセンスに断固として抵抗しなければなりません――曲の冒頭でナレーシヨンはこんなことを言っている。都会のゲリラたちは、多くを欲しがりはしないが、自由と信念を決して譲ることもしない。彼らは誰よりもこの監視社会の抑圧を知っているけれど、それに屈することもない。SFPが奏でるイクストリーム・サウンド――そのノイズと咆哮に安っぽい微笑みはないが、それはしかし、そんな彼らの居場所を確認するジョイフル・ノイズでもある。

昨年の「Change The Mood / Movies Scenes」、あるいはDMBのコンピに収録された“falsehood”以来の新作がようやく届いた。「Cut Your Throat」はSFPの変わらぬ態度と新しい姿が聴けるシングルである。音楽的な観点で言えば新しいSFPであり、ハードコアという観点で言えば変わらぬSFPである。

タイトル曲の“Cut Your Throat”は、中原昌也からECDまでもが“天才”だと惜しみない賛辞を送るラッパ一、NIPPSをフィーチャーしている。
NIPPSのニヒルで不吉な声とシュールな言葉のドープなライム、そして場末のジャズ・クラブの演奏が終わると、情け容赦ないナイフのようなギターノイズが飛び出す。ハイスピードなプラストビートと今里の咆哮が稲妻のように走る。

2曲目の“Here Come The Night”はいわばダーティ・ノイズ・ディスコ・ハードコアである。暴風雨のようなノイズとダンサブルなビート、そして今里による遠くの叫ぴ声とのコンビネーションは、真夜中に広がる都会のゲリラたちの居場所に祝福を上げているようだ。強いて喩えるなら、『メタル・マシン・ミュージック』のハードコア・パンク・ヴァージョンといったところ。

ホークウインドによるスペース・ロックの名曲をカヴァーした“Silver Machine”は、このシングルのクライマックスだ。今里が絶対の信頼を寄せているカヒミカリィが参加したこれは、SFPのどんな曲よりもグルーヴィーに仕上がってい。そしてお聴きの通り、この曲においてもグッチンのギター・サウンドは冴え渡っている。そしてその轟音と力ヒミのハスキー・ヴォイスによって、最高のスペース・ノイズ・ロックが完成したというわけだ.ちなみにヴィプラフォン(のようなもの?)を演奏しているのは今里。

さて、“Silver Machine”が終わると、“Outro”としてスタ一バーストによる軽快なプレイクビート・サウンドが出てくる。この、地獄と天国を往復するような振幅も、SFPが好むところである。この発曲を提供しているスタ一バーストは、SFPポッセのひとりで、DJであり、トラックメイカーであり、レーベル〈セミニシュケイ〉の主宰者のひとりである。

SFP、もしくはその仲間たちは、自分たちの行為を“遊ぶ”という言葉で表現する。仲間と遊ぶ、この都会で遊ぶ、自由に遊ぶ――SFPやその仲間たちによるそうした行為が、われわれの暮らすこの社会における“自由”の境界線を探り当てていることをご存じだろうか。その意味において、SFPはこの国おけるもっともラジカルなストリート・ミュージックである(そう、たとえばMSCやブラック・スモーカーといったヒップホップの連中と同じように)。
だからこそ、SFPが開拓するこの領域について、われわれ音楽業界で文章を書いている人たちが想像力を使って考えることは、とても重要に思われるのです。そしておそらくそれは、SFPに触発された物書きにできる最善の行為ではないのでしょうか。挑戦するのなら、SFPもきっと喜んでくれるはずです。

― 野田努
  • DISC 1
  • 1. CUT YOUR THROAT. featuring NIPPS
  • 2. HERE COMES THE NIGHT.
  • 3. SILVER MACHINE (HAWKWIND) featuring KAHIMI KARIE
  • 4. OUTRO (STARRBURST)