リリース情報
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MORITZ VON OSWALD TRIO
Horizontal Structures
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モーリッツ・フォン・オズワルド・トリオ
『ホリゾンタル・ストラクチャーズ』 - 2011/03/02
- CD
- PCD-93386
¥2,415(税抜¥2,300)
リカルド・ヴィラロボスが「様々な周波数でマッサージしてくれるようなアルバム」と賛辞を贈った『ヴァーティカル・アセント』(2009 年6 月発表)、フランソワ・Kやカール・クレイグの参加も話題になったライヴ盤『Live In New York』(2010 年7 月発表)と、順調にリリースを重ねて来たベルリンのスーパーグループ、 MvOT が早くも完成させた新作スタジオ・アルバム。ギターやダブルベースといった楽器も取り入れ、さらなる深化を遂げた異次元のサウンドが素晴らしすぎる傑作。
モーリッツ・フォン・オズワルド、マックス・ローダーバウアー(NSI, サン・エレクトリック)とサス・リパッティ(ヴラディスラフ・ディレイ, ルオモ)のトリオは、3 枚目のアルバムとなる本作で、ポール・サン・ヒレール(ティキマンとしても知られる)のギターとマルク・ミューエルバウアー(ECM からのリリースで知られる)のダブルベースによって豊かな広がりを得ている。『ホリゾンタル・ストラクチャーズ』は、以前のスタジオ録音『ヴァーティカル・アセント』よりも明らかに開かれており、表情に富んだアルバムである。より光と影のコントラストが増しているのだ。サン・ヒレールとミューエルバウアーは、核となるトリオによる親密な音とリズムの相互作用に新鮮なドラマと振幅を加えている。アコースティックとエレクトロニックの境界を拭い去っていくこの5 人の調和は特筆に値する。
グループの進化は冒頭の「Structure 1」にしっかりと表れている。演奏とアレンジにこれまで聴いたことがなかったような瑞々しくロマンチックな質感があり、ギターのリックにはブルージーな感じがあり、ベースは肉体的な存在感だけでなくメロディも分け与え、シンセサイザーの反復進行はどういうわけかより絵画的にして緩やかで、リパッティのパーカッションは感覚のおもむくままに動き回っているようだ。
「Structure 2」は、70 年代のスパイ映画的なジャズか、あるいはグルーヴが堅固なクラウトロックのようで、ローダーバウアーとフォン・オズワルドのエレクトロニクスが、リヴァーブとディレイの絡み付くようなクモの巣の中できらきら輝いている。気怠く踏み出していく「Structure 3」は、乾いたドラムマシーンの上に、サン・ヒレールの弾くコードが濃い霧のように立ちこめ、フォン・オズワルドとマーク・エルネストゥスによるリズム&サウンド名義の作品をかすかに想起させる。最後に、構造的には最もテクノに近い曲である「Structure 4」は、ミューエルバウアーが弦を弾いたり弓で弾いたりこすったりする音が前面に出て、いたずらっぽい感覚に満ちている。
その複雑性にも関わらず、本作はとても遊戯性に富んだアルバムであり、トリオの即興演奏者としての自信と共感が増したことで、彼らがパーカッシヴな空想の飛翔や、唐突な回れ右や、未知に向かうベクトルに身を任せることを可能にしている。『ホリゾンタル・ストラクチャーズ』は他の何を措いても、自由に聴こえる。
- DISC 1
- 1. Structure 1
- 2. Structure 2
- 3. Structure 3
- 4. Structure 4