RASHINBAN 羅針盤

BOREDOMSやROVOなどで活躍する山本精一が中心となって結成されたフォークロックバンド。1988年結成。2005年ドラマーの急逝により解散。

「孤詣独往の音楽家山本精一にとって歌とは何だろうとの問いは、素朴だが不遜なものである。歌声の涼やかなることを密かに知らしめていた稀人・山本精一におけるポップスとはこれである。心のすきまにするすると入り込んでくる山本の歌は、まるで場所と時を選ばない。ウタモノなどという蔑称で括るのはやめたまえ。音楽家であればこそ言葉はある日ふわりと作り出すメロディの上に舞い降りてくるのもなのだ。とはいえこのような美しいメロディをものすごく大きな叙情によって歌にできる人間は極めてめずらしい。山本のなにげない懐の広さは得体の知れなさの証である。この得体が知れない柔らかさを較べる人がいるとすればポール・マッカートニーしか思い浮かばない。羅針盤はポスト・ロックなんですか?などと聞く人がいたら、とりあえずちがいますがそうかもしれませんがどうでもいいでしょうと答えるのです。羅針盤を聞いて自分も歌い始めたという人もいるだろう。世の中が励み励まされ舐めたり舐められたりのくだらないラブソングばかりになってしまったとき突如として海上に出現した捕鯨船のようなものだったからである。淡々とした日常の中にある喜びなんてことさら声張り上げて万人に告げるものではない。家のない金のない職もない頼りもない人の寝ぐらのような歌がここにある。」

―湯浅学

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