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プログレッシヴ・メタル〜ジェント〜ハード・フュージョンから導かれた新世代ギタリスト“I BUILT THE SKY”最新作国内盤リリースに伴いエクスクルーシヴ・インタビュー公開!
2020.08.05 INFORMATION

プログレッシヴ・メタル〜ジェント〜ハード・フュージョンから導かれた新世代ギタリスト“I BUILT THE SKY”最新作国内盤リリースに伴いエクスクルーシヴ・インタビュー公開!

(C)SAM TAN

オーストラリア/メルボルンを拠点に活動するロハン・スティーヴンソンによるインストゥルメンタル・ギタープロジェクト、アイ・ビルト・ザ・スカイ最新作『ザ・ゼニス・ライズ』日本国内盤リリースに伴い独占インタビュー公開!音楽的なヒストリーからプロジェクトのコンセプト、またサウンドへのこだわりやアルバム制作に関することなど詳細かつ熱く語ってくれました。進化し続けるテクニカルなギターはもちろんのこと琴線を揺さぶるエモーショナルなサウンドで世界各地にフォロワーが増殖中の2020年度最注目ギタリストの貴重なインタビューです!

取材・文:澤田修

――初めてのインタビューになりますので、まずはあなたの歴史をお聞かせください。
Rohan Stevenson (以下、RO):もちろん!僕は、1986年12月5日にメルボルン中心部からクルマで60分くらいの郊外にあるリリーデイルという街で生まれたんだ。現在は、ダイアモングリークというメルボルンから35分くらいの郊外で暮らしているよ。高層ビルはなくて民家が並ぶ自然豊かな小さな街なんだ。

――初めて手にした楽器はなんでしたか。
RO:8歳くらいのときに始めたキーボードが最初の楽器との出会いだったね。それから11歳のときに父親の影響でギターを手にしたんだ。父はバンドでギターをプレイしていたから、家にギターが何本もある環境だった。彼が教えてくれたいくつかのコードを覚えてから、ギターのレッスンを受けることにしたんだ。

――初めてプレイした曲はなんですか。
RO:父親が弾いて教えてくれたCreedence Clearwater Revivalの「Bad Moon Rising」じゃないかな。ギターの先生から学んだのはGREEN DAYの「Good Riddance (Time Of Your Life)」だった。曲が弾けたことにとても興奮したし、沢山のパンクロックソングからパワーコードも覚えていったんだ。

――当時はバンドも組んでいたんですか。
RO:うん、高校でバンドを組んでいた。一緒に曲を書いたりプレイしたり楽しい時間だったよ。高校を卒業したあとは本格的に音楽を勉強したくなってBox Hill Instituteという音楽学校のミュージック・パフォーマンスコースに進学したんだ。そこでは音楽理論から音楽業界のことを学びながら、多くのミュージシャンに出会えたし、色んな経験を積ませてもらったよ。その頃からミュージシャンになりたいという気持ちがどんどん強くなっていったんだ。

――その後、I BUILT THE SKYというソロ活動に入ったんですか。
RO:いくつかのバンドでプレイしたんだけど、うまくいかなかったんだ。I BUILT THE SKYを始めたのは2012年のことで、生活のための収入を得るためにギターの先生や、仕事をしていたときに趣味で始めたプロジェクトだった。それからSNSで作った曲を紹介しているうちに、色々なところから注目されるようになったんだ。その結果、昨年思い切って仕事を辞めて、I BUILT THE SKYに専念することにしたのさ。

307_アー写2(C)SAM TAN

(C)SAM TAN

――これまでにリリースしたアルバムは、『i built the sky』(2012年10月)、『The Sky Is Not The Limit』(2016年)、そして日本デビュー作となる『The Zenith Rise』(2019年11月)の3枚ですか。
RO:そうだね。ファンの一部の人は『B Sides』(2015年)もアルバムと捉えてくれている人もいるけど、僕にとってはタイトルの通りBサイドの曲を集めた作品であって、アルバムとはおもっていない。だから『The Zenith Rise』はI BUILT THE SKYの3作目のアルバムだね。

――2020年1月に「Silo」というシングルをリリースしていますね。
RO:“サイロ”っていうんだ。僕がエンドース契約しているBare Knuckle Pickupsがピックアップを送ってくれて、そのトーンが気に入ってしまってね。そのピックアップを搭載したギターで弾いた曲が「Silo」になったってわけさ。それ以上のタイトルは思い浮かばなかったよ(笑)。とても魅了されてしまっていたからね。

――あなたが弾くギターはメロディックで、天空に向かっていくような独特な力強さと温もりを感じます。好きなギタートーンを教えてください。
RO:僕が使っているBare Knuckle Pickupsのピックアップ“WARPIG”は、ものすごく太くて力強い音を出してくれるんだ。“WARPIG”のパワフルなギタートーンは、まるで素晴らしい音響システムのある会場のステージでギターを弾いているかのような気持ちにさせてくれるよ。それが、いまのお気に入りのトーンだね。

――あなたはテクニカルなギタリストとしてだけではなく、とても優れたメロディメーカーだとおもいます。あなたが影響を受けたソングライターはいますか。
RO:僕は、優れたメロディを持った音楽はパンクロックだとおもっているんだ。ボーカルメロディもそうだし、ギターのラインもとてもメロディックだとおもう。パンクロックにはテクニカルなギターはないけど、キャッチーで強いメロディを書くことの大切さを学んだよ。

――リスペクトするギタリストは誰でしょうか。
RO:僕にとって“良い曲”こそが尊敬する部分で、ギタリストというのは良い曲の一部だと考えている。音楽を聴くときにギターだけを聴くというタイプでもないしね。だから、僕にとって良いギタリストというのは、良いソングライターでもある。

Elliott Smithは素晴らしいよ、他にもDave Grohl(FOO FIGHTERS)の曲を聴くと自分の中に潜んでいたエネルギーが湧き出てくるね。テクニカルなギタリストなら、Misha Mansoor(PERIPHERY)からは大きな影響を受けているよ。オーストラリア国内だとPLINIやJake Howsam Loweも素晴らしいミュージシャンだね。僕に好きなミュージシャンの話をさせたら永遠に終わらないよ(笑)。

――I BUILT THE SKYは、完全にあなただけで活動をしているんでしょうか。
RO:そう、僕自身がマネージャーでもある(笑)。マネジメント会社に所属することなく、完全なるインデペンデントとして活動しているよ。ただ、ライヴのブッキングだけはEvolution Touringというインドを拠点としている会社と契約していて、彼らとは常にアイデアのやりとりをしているんだ。彼らはPLINIとも仕事をしていて素晴らしい手助けをしてくれているよ。あと、UKのAtonal Agencyともブッキングの契約しているんだ。

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――ここからは日本デビューアルバム『The Zenith Rise』のお話しを聞かせていただきたいのですが、まずはタイトルに込めた意味を教えてください。
RO:“Zenith”には2つの意味がある。1つ目は頂点、すなわち成功を意味する。2つ目が真上を意味する天頂なんだ。1つ目の頂点は、この作品に収められている楽曲は最高の出来栄えだと感じていることからフィットするとおもった。そして2つ目は、バンド名にもリンクするんだけど、自分の創造力は頭上に広がる空のように無限の可能性を秘めているという点。そういったことから“Zenith”と共通する部分を感じて名付けたんだ。そして“Zenith”という単語自体はよく知られているから、インターネットで検索しても埋もれないように“Rise”を付け足した。前進するという意味にもなるとおもうよ。

――前作『The Sky Is Not The Limit』(2016年)にもリンクするタイトルですね。
RO:うん、自分のスタイルとタイトルもリンクさせているんだ。突然3作目になって『Elephants in the Field(野原のゾウ達)』ってタイトルの作品をリリースしたくないしね(笑)。空や無限の可能性を連想させてくれるタイトルにしたかったんだ

――今作も、ギター、ベース、ドラムなど全ての楽器の演奏をしているんですか。
RO:そうだね。ドラムはプログラミングしたものを使用しているんだ。僕はドラマーじゃないからね。

――プログラミングされたものなんですか?誰かがプレイしているとおもっていました!
RO:うん、僕はドラムのパートをプログラミングするのが好きなんだ。本物のドラム・サウンドにかなり近づけたとおもうけど、あれはMIDIプログラムなんだ。今回は友人でありツアーメンバーのドラマーRob Brensにアドバイスをもらいながら仕上げていったんだ。Robが僕の横に座りながら、プログラミングされたドラムに対して様々なアイデアやフィーリングを伝えてくれたよ。そのプログラムをミックス担当のForrester Savell(Karnivool, SikTh, Dead Letter Circus, Skyharbor, Animals As Leaders)が仕上げてくれたのさ。

307_アー写3(c)Elgin Huang Jiale

(c)Elgin Huang Jiale

――④「Stellar Evolution」の中間部分のスリリングなギターとベースの掛け合いも印象的です。このベース・パートもあなたが弾いているんですか。
RO:うん、ベースとギターは全て僕が演奏している。ベースに関してもツアーメンバーのベーシストSam Tanがアドバイスを受けながら僕が弾いているんだ。

――Forrester Savellは、ミキサー、マスタリング・エンジニア、そしてプロデューサーとして今作に関わっていますね。
RO:そうだね、Forresterは初めて招いた外部のエンジニアなんだ。昨年までは趣味の延長のような状態で音楽制作をしていたけど、フルタイムでI BUILT THE SKYを動かすようになってからは、もっとサウンドに関して追求したくなったし、楽曲をベストのカタチで発表したいと感じるようになった。自分以外の誰かの力を借りようとおもったとき、最初にForresterが浮かんだんだ。彼は素晴らしいアーティストたちの作品を手がけているし、僕の楽曲をより良いものにしてくれると確信していたからね。

――Forrester Savellとはどのように仕事をしたんですか。
RO:彼とのやりとりは細かいところまで全てEメールでやったんだ。彼は、僕が進みたい方向性を理解してくれていたから、スムーズにやりとりすることができたよ。僕がベストを尽くして施したミックスをForresterに送ると、それを越える素晴らしいミックスが彼から返ってくるんだ。いつもそれを聴くのが楽しみだったね。Forresterのことを尊敬していたから、最初は緊張していたけど、徐々に慣れてきて最終的にはとても良い関係を築けたよ。一人で作業をしていると、ときどき何が正しいのか分からなくなるときがある。例えば、スネアの音量はこれでいいのか、とかね。そんなとき彼が正しい答えを与えてくれたんだ。

I Built The Sky – Diamond Dust (Feat. Tim McMillan & Rachel Snow)

――今作の後半に収められている⑨「Diamond Dust」は、異彩を放つ存在ですね。バイオリンを弾いているのは誰なんでしょうか。
RO:あの曲に参加してくれているのは、TIM MCMILLAN & RACHEL SNOWというデュオで、昔からの友人のRACHELがバイオリンを弾いてくれている。彼らもオーストラリア人で、ドイツを中心に1年のほとんどの時間をツアー生活にあてているミュージシャンなんだ。

過去に何度か一緒にプレイもしたことがあって、とても上手くいったし楽しめた。今回も彼らに参加してもらうことで作品に華やかさをもたらすことができるとおもって参加してもらったんだ。TIMも素晴らしいギターを聴かせてくれているよ。

――今作は、個々の曲がとても際立っていると感じました。①「Up into the Ether」は最高のオープニング・トラックだとおもいますが、続く②「Journey to Aurora」もそれに引けを取らない作品冒頭向けの楽曲に感じます。作品のテーマなどはあるんですか。
RO:今作はそういったテーマのようなものは一切設けていないよ。それぞれの楽曲が独立しているものにしたかったんだ。共通のテーマやメロディを作品全体に反映させるミュージシャンもいるし、それもクールだとおもうけどね。

今回は、1曲1曲にフォーカスして作り上げていったんだ。だから、『The Zenith Rise』は流れやテーマに沿ったものではなく、違うタイプの楽曲が集められた作品になっているとおもうよ。

――今作の中で、特に印象に残っている楽曲はありますか。
RO:自分自身チャレンジしたのが⑦「The Zenith Rise」かな。仕上がりも気に入っているし、ギターのトーンも捻りの効いたミキシングもとても楽しめたんだ。

あと①「Up into the Ether」も特別な存在だね。この曲のMVの視聴回数が100万回を超えたことは、自分に大きな自信を与えてくれた。そして仕事を辞めてI BUILT THE SKYの活動に専念するきっかけになった曲でもあるんだ。多くの人々との繋がりをもたらしてくれたこの曲にはとても感謝しているよ。

I Built The Sky – Up Into The Ether

――I BUILT THE SKYのストロング・ポイントはなんだとおもいますか。
RO:そうだなぁ、僕は人の心を捉えるヴォーカル・レスの曲を書くことに夢中になっていて、自分自身それが正しい道を進んでいると感じていることかな。

――逆にウィーク・ポイントはなんでしょう。
RO:ハハハ、時間の管理が一番大変なことかもしれないね。あと、1人で全てこなしているから経理的なこともかな。税金に関しても、楽しくないけどやらなくてはいけないことだからね。

――あなたは常に曲を書いているんですよね。
RO:うん、それこそが僕のやりたいことなんだ。でも、生活をしていくための資金を求めて始めたPatreon(ミュージシャン向けのクラウドファンディング・プラットフォーム)の支援者たち向けのコンテンツを作ることにも時間を割いているよ。良い支援者たちに恵まれてとてもよいコミュニティが出来ている。YouTubeチャンネルも自分で運営していてMVに関しても人々のアドバイスや力を借りながら制作しているよ。映像に関してもツアー・ベーシストのSam Tanに協力してもらっているんだ。

――『The Zenith Rise』の日本盤が、いよいよ8月5日にリリースとなります。
RO:とてもエキサイティングなことだよね。信じられない気持ちなんだ。

――(コロナ禍のため今は難しいとはおもいますが)来日公演を望むファンも一気に増えるとおもいます!
RO:日本には一度も訪れたことはないけど、是非行ってみたい場所だよ。だから、周囲の人たちにI BUILT THE SKYのことを広めて欲しい。それがI BUILT THE SKYの日本公演に繋がるからね!

307_アー写4(c)Victor Gallego

(c)Victor Gallego

<アルバム情報>
アーティスト:I BUILT THE SKY / アイ・ビルト・ザ・スカイ
タイトル:The Zenith Rise / ザ・ゼニス・ライズ
レーベル:P-VINE
品番:PCD-24964
定価:¥2,400+税
発売日:2020年8月5日(水)
解説:澤田修
日本盤限定特典:全収録曲ギターTAB譜(PDF)付き
*エンハンスドCD仕様

http://smarturl.it/TheZenithRiseJP

《収録曲》
1.Up into the Ether
2.Journey to Aurora
3.Wormhole Traveler
4.Stellar Evolution
5.Light Pillars
6.Stars and Darkness
7.The Zenith Rise
8.The Only Way Out Is Up
9.Diamond Dust
10.Moonbow