Nick Holder ニック・ホルダー

ムーディーマンが[KDJ]、セオ・パリッシュが[Sound Sygnature]を興し、デトロイトからラディカルかつアナーキーなシングルを量産していた’90年代半ば、湖の向こう岸・トロントでも’90年代前半から詳細不明のヤバいシングルをシコシコ出していた男がいた。それがニック・ホルダー。前述の巨頭ふたりが"テクノ"のホームグラウンド発、というアドヴァンテージも手伝い、日本では「デトロイト第二世代」として熱烈サポートされ始めたが、そうしたバックグラウンドのない彼は、欧州経由でのバズを待つこととなった。

’90年代半ばからスタートにかかわらず「キテる」DJに次々とアプローチをかけまくり、一大レーベルとなった[Studio K7]がまず彼を見初め、『One Night In The Disco』(’96)、『Still On Track』(’98)と2枚のアルバムをリリース。

いっぽう、英[NRK]はシングル単位で契約、マヌュエル・ゴッチン"E2-E4"ネタ(つまりスエーニョ・ラティーノ"Sueno Latino"と同ネタ)の"Paradise"にソルト・シティ・オーケストラのリミックスをつけてリリース(’97)、まずディープ・ハウス・シーンで話題に。続いて従来のニックからは思いもよらないサンバ・ネタの"Da Sambafrique"をカット(’98)、ラウンジーなコンピのお供としてこの後次々と使用される。ニックの人気を決定的なものとしたのは、ラテン/ブラジリアンなテイストを積極的に取り入れた時期のリリースというタイミングも手伝い、上記のような著名DJが続々プレイした、パット・メセ二ー・グループ"Slip Away"ネタの"Summer Daze"(’01)。これを機に「夏男」としてクラブ・フリーク間で名が広く流通するも、どっこい本人は多名義を操ることで作風もいろいろ変え、関連レーべルも転がして精力的なリリースをみせている。

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