Kaharu Kizawa (a.k.a. Keebow) 木澤嘉春
日本のロック/フォークの歴史にとって数々の重要な作品を生み出した「伝説のポリドールMR5000 番台」より、「ロックジェネレーションが生んだ、初のシンガーソングライター」として、高橋幸宏、大村憲司などの豪華なバッキングメンバーを配し、デビューアルバム Keebow / Give me a kiss を制作(’75)。しかし、レコーディング時に起きたアクシデントにより、プロモーション等はほとんど行われず、そのアルバムの存在と彼の名はほとんど一般には知られることはなかった。失意のデビューにもかかわらず、他のシンガーと一線を画すグルーヴ感あふれる独特な歌声は、耳にした者に強烈な印象を残し、ライブハウス等の限られたサークルで熱狂的な支持を受ける。文字通り、知る人ぞ知るシンガーとして活動するも、80年の渡米をきっかけにカナダに移住。以後20年余、カナダで美術作家として過ごす。時代の文脈に容易に絡め取られることのなかった彼等(例えば、e.press 前作『エド/街の灯』)の音楽は、現在の溢れかえったネット上の情報の海の中にも、未だその居場所がない。